現状、PSO2一色になりそうです。


by sora_hane
カレンダー
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30

廃人達の狂想曲~~鮮血の破滅者~~

*この記事は下記『砂塵竜巻の大乱闘』の続き記事になります。先に下の記事をお読みになってからご覧下さい。



 十一ターン目。
「まずは、目障りな其れを殺させて貰うよ!」
 当然の如く、ガブリアスが先制。一瞬で肉薄したガブリアスが、大きく両顎を開き――ラグラージの肉体へと噛み付いた。噛み砕く――タイプ不一致で、しかも弱点でもない威力80の技。それでも、残り一割しかないHPを削り取るには十分すぎた。
 山椒魚が大地へと沈み、光となって消えていく。フィルは暴れてくれたラグラージに無言の追悼を送り、僅かに口元を持ち上げた。噛み砕くを打ってきたのは――フィルにとっては美味しい情報だった。ならば、コイツで対処できる。
「ソイツを止められるほどのポケモンはいないけどな。頼むぞ――ミカルゲ」
 フィルの手前に生み出されたのは、絶望と怨念によって体を作り出す亡霊――ミカルゲ。悪・ゴーストのタイプ相性によって弱点が存在しないポケモンで、HPは50、素早さに至っては35と先制など欠片も望めないポケモンだが、攻撃と特功は平均並に、防御と特防は高いパラメータを誇っている為、意外と硬いポケモンの一体。鈍足にもかかわらず様々な型が有り、読み難いポケモンの一体だ。
「ミカルゲ? それで、ガブリアスの攻撃を受けきるって?」
「生憎、其処まで甘くは見ていない。だが――何も、受けて潰すだけが能じゃない」
 フィルは余裕を持って微笑んだ。レイターの性格と、技構成から予測するなら、確実にコイツがキーとなる。
「まぁ、話してないで始めよう。そろそろ、観客も痺れを切らすかもしれないしな」

 十二ターン目。
「それじゃぁ、受けて貰おうか? 龍が龍である証――逆鱗の一撃を!」
 鮫を思わせる獰猛さを持って、龍が地上を全速で駆け抜けてくる。怒りに我を忘れたように、強大すぎる一撃を亡霊の肉体へと捻じ込んだ。逆鱗――龍族物理最強の大技。今までにも何回か見せられてきた、龍タイプのメインウエポンであり、切り札だ。
 体内まで深く捻じ込む一撃に、ミカルゲのHPが半分強まで低下する。後一撃、耐えるか否か。
 ――防御特化してなければ、二発目で確定死だったな。
 物理タイプの攻撃を受け流す為に、HPと防御に全努力値を注ぎ込んだ甲斐は有った。そうして――読みが当たった。
 遅れて、ミカルゲが動き出す。平面のような顔から、ポゥ、と青く光る小さな焔が打ち出された。怨霊の輝きを宿した、薄暗い感情の炎――鬼火。命中すれば相手を火傷状態へと変化させる補助技の一つ。
 けれど――ゆっくりと飛来する其れは、砂の衣を纏った龍に当たる事無く消失した。
 ――命中率がキツイか、やはり。
 フィルは内心で唇を噛み締めた。身代わりを持たっていなかった読みこそ当たっても、これでは意味が無い。
「――身代わりを持ってないって、読んだのかい?」
「噛み砕くを打った時点で予測がついた」
 砂パのガブリアスは、大抵身代わりを持っている――砂がくれとの相性上の問題から、むしろ持っていない方が珍しい。先手で身代わりを張られてしまっては、状態異常を誘発させる補助技は全て無効化される。そう言った意味では、鬼火の発動は賭けだった。
 それでも賭けに走ったのは、噛み砕くの存在だった。ガブリアスの技構成として『地震・逆鱗or龍爪』はほぼ確定。残りのスロットは二つで、その内片方には高確率で炎技が存在する。龍と炎の攻撃タイプは相性上、ヒードランを除く全てのポケモンに等倍以上のダメージを与え。そのヒードランは地震によって四倍ダメージを受ける。となると、残りは一つ――其処に噛み砕くが入ってきた以上、身代わりは存在しない確立が余りに高い。
 ――ここまで読めて外せば、笑い話にもならんがな。
 ターン終了時、砂嵐にミカルゲのHPが削れて行く――それと同量だけ、削れた後に回復する。持ち物、食べ残し――毎ターン、HPを1/16回復させるアイテム。元々超長期戦を見込んだ型のミカルゲなので持たせていたが、砂嵐を無効化する程度には役に立ってくれたらしい。

 十三ターン目。
 もう一度、ガブリアスが肉薄し、荒れ狂う破滅の一撃をミカルゲへと捻じ込んだ。逆鱗に触れられた龍が、世界を壊すまで荒れ狂うように、逆鱗は数ターンの間、他の全ての行動を封印してひたすら殴りかかる大技だ。こうなるのは当然の未来。
 今度も、また乱数域。この一撃をまともに受けて――
「残った!」
 リリィが遠くで喝采を上げた。冥界へ送られる寸前まで体力を吹き飛ばされながら、それでもミカルゲはまだ、現世に魂を繋いでいた。
「――今度こそ、頼むぞ」
 小さな問いかけに、ミカルゲが心得たように頷き、ポゥ、ともう一度、鬼火を解き放つ。ゆらりゆらりと飛来する其れは、今度こそ砂の衣に隠れた本体に到達すると、その全身を生熱く取り囲んだ。
『ガブリアスは火傷を負った!』
 状態異常――火傷。ガブリアスが苦しそうに表情を歪め、レイターが苦虫を噛み潰した。
 火傷は、物理ポケモンにとって最悪な状態異常――毎ターンの終了時にHPが1/8低下。しかもそれだけでなく『物理攻撃のダメージが最終的に半減』してしまう状態。攻撃力命のポケモンの、その威力が半減されるのだ。これを最悪と言わずしてなんと言えるのか。
 ターン終了時の砂嵐に、食べ残しが発動するより早く、ミカルゲがHPを0にした。そうして、粒子となって消える刹那、ガブリアスに対して唇の両端を吊り上げ、はっきりと笑っていたのがフィルには見えた。
 ガブリアスは火傷状態――その上、未だ逆鱗で我を忘れている。このチャンスを捨てる訳には行かない――切り札を使う、最高のタイミング。
 ――お疲れ様だ、ミカルゲ。このチャンス、捨てはしない。
「――レイター。確かそいつが真骨頂、だったな?」
「あぁ。火傷は凄まじく痛いけれどね」
 不貞腐れた憤怒の表情、とでもいうべき表情を見せる少年に、フィルは微かに――ほんの微かにだけ、笑いかけた。
「こっちも、カードを切る準備が整った。殺らせて貰うぞ――残り、全員を」
 フィルは手元を操作して、己の切り札を、その戦場へと出現させた。

 真紅の鋼を全身に纏った、鮮紅の鬼神。相手を屠る事のみを冷静に求め続ける、戦場の求道者。声無き気合を高らかに放ち、戦場を睥睨する、紅の羽を持つ戦士――ハッサム。
 虫・鋼タイプのポケモンであり、弱点は四倍ダメージを受ける炎のみ。抵抗は多々あり、パラメータも特功が55、素早さが65と低い物の、他は平均以上。攻撃に至っては『130』――六百族とも肩を並べる、破壊力の持ち主だ。
「――それが切り札? 切り札って言えるほどなのか、ソイツ?」
 怪訝そうにレイターが呟く。そういえば、彼は余り対戦している形跡はない。していたとしても、執事達が相手であれば、多少手を抜かれているのかも知れない。
 ただ――
「あぁ。間違いなく、コイツが俺の切り札だ」
 フィルは淡々と、ただ淡々と、彼に答えた。後は、見せてやれば良い――
 鮮紅の鬼神、その意味を。

 十四ターン目。
 ガブリアスが我も忘れて、全力でハッサムに喰らい掛かる。龍族最強技、逆鱗。だが――
『効果は今一つのようだ』
 タイプ・鋼は龍タイプの攻撃を唯一半減するタイプ。その上、火傷による攻撃力低下――ハッサムのHPは二割弱削れた程度に過ぎなかった。
 後手。
「――剣舞」
 ハッサムの周囲に舞い上がったのは、三本の刃だった。紅の戦士は両手の鋏で其れを掴むと、その場で戦を楽しむように、軽やかで荒々しいステップを踏む。技名・剣の舞。使用者の攻撃力を二段階引き上げる、戦の舞。
 一度積んだ時点で、攻撃力は相当な物へと変化している。だが、まだ。
 ガブリアスが暴れ疲れ、逆鱗の反動によって混乱する。火傷によって体力が、地道に削り取られていく。

 十五ターン目。
「切り札なのは構わないが、幾ら踊った所で、一撃で落とせれば関係ない話だろう!」
 レイターがそう呟いて、行動を決定。確かに、ガブリアスが炎技。それも、特殊技の大文字を有していれば、四倍ダメージを受けて一撃で沈む。
 まぁ最も、フィルがそれに対する抵抗手段を用意していない場合で――
「混乱を振り切れれば、の話だがな」
 バン、とガブリアスの体が大きく震えた。混乱に寄る自滅ダメージ――攻撃失敗。
 その隙に、ハッサムがもう一度刃を生み出す。クルリクルリと破滅を齎す優雅な舞に、その攻撃力がもう二段階増加し、三倍にまで膨れ上がる。レイターから血の気が引いた。
 ガブリアスのHPは既に半減。ここまで来れば、後は行ける。

 十六ターン目。
「――打ち貫け」
 フィルの呟きと共に、紅の残像を残し、ハッサムの姿が消える。次に現れた瞬間には、龍の腹部へと、強烈な鋼の拳を捻じ込んでいた。
 鋼タイプの先制技・バレットパンチ――だが、ハッサムが使うこの技は、他の先制技とは一味、違う。
「ハッサムの特性、テクニシャン――効果を忘れたか?」
「――攻撃力が六十以下の技を使用した際、威力を1・5倍にする……切り札、とは、そういう事なのか?」
 納得した少年の眼前で、最高峰の龍が光へと消えていく。フィルはただただ笑い、頷いた。
「ハッサムは攻撃種族値130の、鬼アタッカー。その攻撃力から繰り出されるバレットパンチは、テクニシャン補正による1・5倍と、タイプ一致補正による1・5倍で、実質攻撃力は90にまで増加する。先制技として考えれば異常過ぎる威力の上に、剣舞による攻撃力増強――上手く三回踊ったが最後、永遠に止まらない」
 フィルがハッサムを切り札と呼ぶ所以は其処にあった。異常すぎる攻撃力の高さと、其れを増強する技まで有している時点で、相手さえ選べば平気で六タテすらしてしまう。何より、ハッサムを出すのは決まって終盤――『苦手な相手を全て排除した状態』で繰り出されるのだ。弱点が炎しか存在しない為、意外と舞える相手は多い。一回踊っただけでも十分すぎる威力を持つ為、耐久の高さを利用すれば、無理やり踊れない訳でも無い。
「さぁ、解説はここまで――続けようか?」
 フィルの言葉に、レイターが血の気が引いた顔で次の行動を選択する。残り二体は不透明だが――あの様子では、望みが無いのだと良く分かる。
 レイターが繰り出してきたのは、地面の体を持つ蝙蝠――グライオン。地面・飛行タイプのポケモンで、合計種族値こそ低い物の、パラメータバランスが良い。防御が特化されて高く、特功が致命的に低い以外、かなり安定したパラメータを持っている。弱点も氷が四倍で水が二倍だが、その程度でしかなく、かなり安定するタイプのポケモンだ。特性も『砂隠れ』と、砂パの物理受けとしてはかなりの実力者。
 ハッサムは、本来なら持ち前の防御力と攻撃の相性で封殺できる相手だった――あくまでも、本来ならば。

 十七ターン目。
 もう一度、ハッサムの姿が掻き消える。現れたと同時に叩き込まれた鋼の拳に、グライオンの体が吹き飛んだ。けれど――
「――残った!」
 レイターが喝采を上げる。グライオンのHPは七割五分吹き飛んで、けれど、それだけだった。そうして、フィルはこの結果に納得していた。
 今回はステルスロックを撒けなかったし、何よりグライオン――物理受けの一角が相手だ。幾ら強力無比な一撃と言えど、先制技の一撃で持っていける相手ではない。
「――最後の賭けだッ! ハサミギロチン!」
 後手。瀕死寸前となったグライオンの体が、ゆっくりと動き出す。右の鋏を大きく――まるで、ギロチンを思わせるまでに巨大化させて、ハッサムの体を二つに断ち切る。
 一撃必殺技・ハサミギロチン。ノーマルタイプの一撃技で、命中率は30%と低い。だが、命中すれば最後、相手は確実に死亡する――
 命中、すれば。
「悪いな。この状況でお前が勝てるほど、対戦世界は優しくないらしい」
 振り下ろされた一撃を、紅の戦士は空へと飛んで回避していた。無傷で戦士が地上へ降り立ち、倒すべき相手を強く、強く睨みつける。
 十八ターン目。
 地面の蝙蝠は砂の衣に身を隠す事も出来ず、鋼の弾丸を前に光へと消し飛んだ。即座に、レイターが選択する事も無く、最後の一体が降臨する。
 岩の鎧を纏ったシダ植物。岩肌を纏った巨大な枝垂れ草――ユレイドル。素早さを除いて平均以上の耐久と、平均の攻撃力を有する岩・草タイプのポケモン。岩タイプの特防1・5倍という特性と、自己再生を有する為に、砂パの特殊受けとして活躍できるポケモンだ。
 けれど。ハッサムからすれば、ただの生贄に過ぎないポケモンの一体だ。

 十九――ラストターン。
「――終わりだ、レイター」
 トン、トン、とハッサムが小さな羽を活用し、跳ぶように距離を詰めていく。内側に割り込んだ紅の戦士は、思う存分両腕をクロスに振り下ろした。虫物理・シザークロス――威力80のタイプ一致、通常攻撃技。
 虫はユレイドルにとっての弱点でもあり、更にバレットパンチ以上の威力を誇る通常技。ユレイドルが耐え切れる道理など、当然として存在しない。
 最後の一体が、粒子へと消えていく。全ての敵を消失させた鮮紅の鬼神は、戦相手を称えるように、瞼を閉じて胸の中心へと右拳を置き、ただただ深く黙祷し続けた。

『トレーナーフィルvsトレーナーレイター 2-0・勝者フィル』


 観客席に戻った時、最も早く声をかけてくれたのは、やはり、リリィだった。
「フィル、お疲れー! レイターは、どうかしたの?」
「色々有って立ち直れそうも無さそうだから放っておいてやれ」
 フィルはちらりと背後に視線を投げた。戦場で深く深く頭を垂れて跪いている少年には、もう哀れみしか沸いてこなかった。大慌てで執事達が駆け寄っているが、少なくとも回復まで暫くは掛かるだろう。
 と、ルルが何処か表情を煌かせて、話し掛けてきた。
「フィル、君の、強い、ね……ハッサム、かぁ……」
「バレットパンチの追加が余りにも大きすぎたな。電光石火の1・5倍だ――プテラ程度なら、攻撃UPが無くても確定一発だからな。今はまだ少ないが、これから確実に増加してくる筈だ。特にルル、ハッサムは霧パの天敵だろ? 対策は考えておいた方がいい」
 ルルは小さく、はっきりと頷いた。ハッサムの鋼――これは氷タイプの弱点だ。最悪の場合、ハッサム一匹に全抜きすら有り得るほど、霧パーティは鋼に弱い。こちらからの攻撃は半減、無効からのダメージは倍。挙句に先制技でも耐久が脆いポケモンが多い霧パでは、一度舞われ『なくても』致命傷のダメージを負う。
 と。
「あのさ、ハッサム談義は良いんだけどよ……フィル、次って俺達何処に行くんだ?」
 そういえばまだ、彼らには見せていなかった。
 マークからの問いかけに、フィルは懐から先の紙切れを取り出し、放り投げた。
「今度は其処だ。レイターが復活してから行くとしよう――場所はお前たちで考えておけよ」
「『時代や文明の欠片を閉じ込めて、訪れる人に公開する場所』――古本屋さんとか?」
 ――さぁて、どれだけかかる事やら……。
 フィルは欠伸を零しながら、謎解きになる友人達に背を向けて、力無く寝転んだ。



 フィルが半刻後に目を覚ました時に待っていたのは、暗号が解けて喜ぶ顔でも、回復したレイターの顔でもなく――
 いまだにレイターが遠くで沈み込んだまま、フィルに寄り添うようにリリィが、少し離れてルルが、そしてマークとメイが其々の場所で、ぐっすりとお昼寝タイムに入っている光景だった。

 そうして結局フィル達が出発できたのは、其れから更に半刻経過しての事だった。


 ――後書き。
 こんばんは。狂想曲の読了、ホントに有難うございます。
 こちらの更新は、少し久しぶりな気がします。月曜の深夜から書き始めて、月曜の夜に書き上げると言う訳の分からん執筆速度で仕上げた、初めてのフル物です。えー、作品の解説などはいつものように後書き記事で! 今はとりあえず眠りたいです……今日殆ど眠ってないからorz
 今回新登場したレイターでエキスターの面々は終了にてございます。レイターはアレです、どっかの嫌味な金持ち少年。しかも、こんの上なく分かりやすい感情してます。まぁ今回は主人公が何でも出来る化け物君なので、嫌味っぷりが更に際立つような、むしろ哀れみすら浮かんでくるといいなぁ、とか思ってるキャラだったり……。
 後記事で解説しますが、最近はホント、フルを行われる場合はハッサムに注意して下さい。不用意に引くとクルクル踊られて、エライ目にありますので;
 それでは、またの機会にお会いできれば。
[PR]
by sora_hane | 2008-12-08 22:14 | ポケモンバトル小説