現状、PSO2一色になりそうです。


by sora_hane
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31

night hawk's dream

 金銀リメイクに一旦押し流されましたが、こちらも絶対に紹介したかった唄なので、負けじと紹介。

 Do As Infinity/夜鷹の夢

 この曲はゾイドジェネシスのOPとして見つけたのです(スパロボKの影響です)が、この曲ほどアニメ版と原曲で曲の感じが変化する物も無いのでは無いでしょうか。
 余りにも聞き惚れて、今回は唄物小説まで書き上げてしまった有様です。既にネット上のブログに別の方がこの曲を素に書かれていたりしますが、其れとは別の、自分なりの世界観で書き上げてみました。
 良ければ続きからどうぞ。
(これはPVでは有りません。ニコニコの職人が作成した物です。この映像が自分にとっての止めになりました)






 ――行ってくるね。大丈夫、正義はこっちに有るんだ!
 ――……死なないでね。何が有ったって、絶対に!
 数ヶ月も前に誓い合った、平和な世界の子供の会話。争いを画面の向こうでしか知らなかった餓鬼の声。
 正義という言葉さえ有れば、何をしたって許されると思っていた、愚か過ぎる人の声――
 余りにも遠く懐かしい、愛すべき日常の声。


 白み始めた空の下、月光が躍る砂漠の夜、闇を纏った夜の鷹が、低空を駆け抜ける。何も知らぬ月の下、エンジンだけが細波に似た音を奏でていた。
「N-1、目標まで5マイル」
『了解』
 幻想的な砂漠の空を抜けるステルス機の中、僕はいつものように無線を使いながら、操縦桿を握っていた。力を込める訳でもなく、震える手で握る訳でもなく、夜鷹を操るに必要なだけの力を込めて。
 この機体――F117、通称『夜鷹』に乗っての出撃は二桁を悠々と超えた。破滅的に唄われる殺戮の悲鳴は、いつまでも消える事無く聞こえ続ける。
 網膜に焼き付いて、消えない光。鼓膜にこびり付いて、取る事が出来ない爆発の音。僕が繰り返してきた、業。
 テロリストの烙印を押された場所に、ただ爆撃を繰り返す。夜鷹と共に空を飛んで、名前も読めない町を吹き飛ばす。今夜も正義の名の下に、テロリストの拠点を吹き飛ばす――正義の名を借りた、大量殺人を行うだけ。
 其処にどれだけの命が生きているか、どれだけの命が笑いあって暮らしていたか。人の数だけ無数の夢があり、生きていく希望が有るか。一方的にテロリストと決めつけられた、ただ平穏に暮らしていただけの命が、今まで落とした町々に、一体どれだけ有っただろうか。
 其の中には、きっと彼女みたいに、とても優しい人も居ただろう。僕みたいに、ただ純粋に正義に憧れた子供も居ただろう。将来は一国を背負って立つ人物も、居たかもしれない。
 そうした人達が、一斉に吹き飛んだ。僕が、吹き飛ばした――其れは、今日も。
「N-1、目標到達。投下」
 僕は機械みたいに無線へと囁いて、操縦桿のスイッチを押し込んだ。
 一秒後、夜鷹の下で焔の花が咲き乱れた。

 生きとし生ける者、その全てを焼きつくして消し去っていく紅蓮の焔。地上でうねる衝撃波が人々の住処を薙ぎ倒し、地上を舐める炎の波が全てを飲み込んで喰らい取っていく。
 眼下に広がる殺戮の世界から目を逸らし、予定通りに機首上げて、弾薬庫の扉を閉める。成功の舞を踊るように旋回しながら、僕は無線を手に取った。
「命中。帰還する」
『了解』
 通信が断絶する。余りにも呆気ない、淡々とした事務的な会話。何も見なければ、何も聞かなければ、ただそれだけで事足りる。何も、何も、何も――考えなくていいのだから。


 そうして、壊した町の上空で旋回した時、ふと、地上から幾筋かの光が打ち上げられるのが見えた。設置されていた、対空砲台からの射撃――目標施設は破壊できても、周囲の砲台までは壊せてなかったらしい。
 ステルス迷彩で隠れた筈の夜鷹目掛けて、無数の花火が打ち上げられる。今まで殺してきた命達の怒り、嘆き、怨み――憎しみが具現化された、砲弾の嵐。
 背筋を凍らせながら、冷徹な思考回路で、ただスロットルを全開にする。砲弾の嵐を引き離し、一気に安全圏へと脱出する。
 闇雲に撃たれている筈だった。姿を隠した夜鷹に当たる事は無い筈だった――
 白み始めた砂漠の空に、朝日より早い閃光が炸裂したのは、そんな甘い考えを持った瞬間だった。

 膨れ上がった光の花は、爆散の衝撃を伴って、夜鷹の体を打ち据えた。至近距離で開かれた光は正面のガラスを砕き、操縦席に居る僕にまで到達した。
 視界が白くなって、世界から音が消えて。それでもエンジンの震動と、風を切る感覚だけは途絶えなくて。
 僕の体は光を抜けて、そうして白んだ空の下、夜鷹と共に突き抜けた――炸裂した硝子の破片に、体中を切り刻まれながら。
「――ァ……」
 突き立った硝子の破片がパイロットスーツを引き裂いて、真っ赤な血液を外気へと溢れさせた。生きとしい生ける者全てが流す、紅の雫がポタポタと流れ落ちていく。
 零れ墜ちていく命の欠片に、体中が冷え込んでいく。夜の砂漠の寒風が容赦なく体を蝕んで、操縦桿を握る手にも、もう力が入らない。無線へと叫ぶにも、喉にも硝子が突き刺さったのか、声が全く出なかった。
 夜鷹と共に駆け抜ける空に、僅かに浮かぶ月明かりが、少しずつ遠くなっていく。夜明けが近い事とは別に、月光に霞がかかり、世界から色が消えていく。
 意識が消えていく。思い出の光すら、僅かに霞んで溶けて行く。産んでくれた母親の温もりも、育ててくれた父親の厳しさも、共に歩んだ友人との思い出も――故郷に残した、彼女の事すらも。

 ドク、ドクと心臓が脈を打つ。今まで僕を育ててきた紅い血が流れ落ち、純粋な死へと近づいていく。
 今までずっと、命を奪い続けてきた――同じ色をした真紅の血で、育てられ育ってきた命を奪い続けてきた。そうして奪取される恐怖が、壊される絶望が、同じ立場になって、初めて心から理解できた。
 どんな正義を振りかざそうと、この胸から零れ落ちる命の欠片を、止める事など出来ない。どんな大義が胸にあろうと、奪われた命を助ける事は誰にもできないのだから。
 終わり行く命の中、操縦桿を持つ手から力が抜ける――寸前、不意に、霞んだ視界が暖かく輝いた――砂漠の朝焼け。
 僕は小さく自嘲を零した。生きてきた国が違えば、こんな朝焼けを見る事も無く、平穏に彼女と暮らせた筈なのに。最後の朝焼けを見る事も無く、ずっと生きて行けた筈なのに――今まで奪ってきた命達も、奪われる事無く、生きていけた筈なのに。
 其れも、もう、遅い。
 ――死なないでね。何があったって、絶対に!
 消え行く感覚の狭間に、最後に聞いた彼女の声が飛び込んでくる。走馬灯。
 泣き声だった彼女の声に、僕は最後に力を振り絞って、謝罪の言葉を囁いた。
「……や、くそ……破っ……め、んね……シ、ェ――」
 言葉が途切れた。僕の体から命が消えた。




 暁の空を飛ぶ一羽の夜鷹が、砂漠の空を光を纏って墜ちていく。地表へと墜ちていく流れ星の中、一人の少年が眠りについた。
 終らない長い夢を伴った、永久の眠りへと。


 ――あとがき。
 この曲が描かれた視線が、F117――世界初のステルス戦闘機、通称『夜鷹』のパイロットの視線で描かれたと聞きます。其れに従って、一人の名も無き少年兵を視点に描きました。
 破壊する側の苦しみを描いた唄で、自分にとっては辛すぎるまでに心に入り込みました。お陰で、この話を書き上げるのは一日足らずで終ってしまった有様です。
 余計な事は余り書かずに行きます。単純に、曲を聴いて何かを思って貰えば良いな、と思うので。

 ではでは、読了、有難うございました。
[PR]
by sora_hane | 2009-05-09 11:08 | 小説