現状、PSO2一色になりそうです。


by sora_hane
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Falseek序幕・『始まりの前』

「ギァァッ……!」
 獣を彷彿とさせるような、断末魔の叫び声。闇の中で轟いた男の声は、不気味な余韻を残して闇に消えた。

 曇天の雲に阻まれて、月明りが地表へ到達しない夜。闇に沈んだ世界の縁に、暖かい輝きが一つ有った。命を終えた枯枝と、魂の消えた屍を糧に、闇を跳ね返す焚火の光だ。
 焚火を中心に広がった、同心円状のドームの中、ベンチのような倒木の上に二つの存在が座っていた。血を思わせる黒い深紅の髪を持つ少年と、夜を塗りつけた髪の色をした青年。焚火をじっと見つめる青年の隣で、少年は無言のまま、一枚の紙を見つめ続けている。
 沈黙の帳を裂いて声を上げたのは、青年の方だった。
「遠い場所ばっか回しやがって……あのオッサン、いつか千切り殺してやる」
「過労死させるつもりか、って言いたくなるね。でもまぁ、仕方ないんじゃない?」
 青年の不平に、少年が間髪入れずに返答する。淡々として、感情が篭っていない声だった。青年が大きく肩を落とす。少年は彼に取り合う事無く、じっと紙を見つめていた。
「仕方ないじゃねぇよ。これで何ヶ月連続だよ……いい加減休ませろ、っつーの」
「なら、仕事を受けなければ良かったじゃないか。別に強制じゃ無いんだしさ」
 小馬鹿にしたような少年の呆れ声。青年の表情が微かに引きつって、
「馬鹿言え、お前! この仕事、どれだけ高額か分かってんのかよ!?」
「金目当てなら無駄口叩かずに仕事しなよ」
 溜息を付きながら、少年が顔を上げる。彼は紙を握り潰し、焚火の中へ投げ込んだ。灰色の煙を上げて、紙切れが焔の中に熔けていく。
 紙が消えるのを見届けてから、少年は倒木から腰を上げた。
「まぁ、仕事内容が内容だけに、断り難いのは確かだけどさ。殺しだしね」
 少年が燃え盛る焚火に視線を投げる。焔の糧となって燃え盛る男の屍に。
「まぁな。けど、流石に次来たら断るぞ」
 青年がうんざりと呟く。少年が其れに言葉を被せた。
「報酬が高ければ?」
「受ける」
 迷いも躊躇いも無く言い放った青年に、少年は肩を竦めて足元のリュックを持ち上げた。小柄な少年を覆い隠していた外套が、夜風に大きく翻る。
「だろうね……それじゃ、俺はそろそろ行くよ。しっかりと仕事してくれよ」
「お前もしっかりやれよ」
 焚火の暖に包まれたまま、青年が間延びした声で言う。少年は振り向く事無く、ただ短く手を振っただけだった。
 少年の姿が、光のドームから夜色の世界に溶けていく。暗闇を歩く少年の足音が、夜の草原にいつまでも響き続けていた。
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by sora_hane | 2008-08-30 02:00 | 小説