現状、PSO2一色になりそうです。


by sora_hane
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カテゴリ:ポケモンバトル小説( 27 )

「――はい、これでお終い」
 シュン、と残響と共に光が消える。対戦者となった少年が、重石を載せられたように両肩を押し下げる。
 思い切り沈んだその少年に、アイリは包み込むように微笑みかけた。ポン、と肩に手を乗せて、少年の手にスタンプカードと次のヒントを乗せる――とはいえ、ヒントでも無いが。
「筋は良かった。また何処かで会ったら、楽しい勝負ができると思う――頑張ってね」
「は、はい!」
 慌てて顔を上げた少年がそう言って、少し紅くなった頬で頭を下げる。彼の仲間達――同一行動班の子供達もまた、慌てて頭を下げた。
 そうしてから、仲間内でヒントの紙に目を通す。アイリは音も無く彼らから離れ、去っていく後姿を見送った。近くのベンチに腰を落として、小さく溜息を吐く。
 ――これで、五組目。この場所に繋がるヒント、そんなに難しかったかしら?
 この場所は好きだが、それでも十時頃からずっと待機させられていては、いい加減に飽きてくるという物。他の対戦者たちより、明らかに圧倒的に戦闘数が少ない気がする。
 第一、時間が時間だ。もう十分もすれば――
 と。
「――あ、居た居た! フィル、多分あの人だよー!」
「ここで叫ぶな、馬鹿」
 静寂を吹き飛ばしてくれる陽気な少女の声が響き、直後に静寂へと追い落す冷徹な少年の声が正面から届いてきた。
 まるで正反対な二人が、掌を繋いで近づいてくる。他に四つの足音が響いているが、最も目立つのはやはり先頭の二人だった。
 ――最後の相手には、面白そうな子達が来たね。
 アイリは感情を表に出さないまま、心の中で僅かに笑った。
 少年達が目の前で立ち止まる。アイリは腰掛けていたベンチから、ゆっくりと立ち上がって、彼らへと微笑みかけた。
「何かしら?」
 いつものように、子供達が僅かにアイリの笑顔に目を向けた――今までの五組だけでなく、日常生活でもこういう事は良くあった。自覚こそ無いが、アイリは整った顔立ちをしているらしい。大体の人間が、笑顔を向けると顔を紅くする。
 ただ、先頭の少年は、海底に棲む龍のように、冷たい視線と凍りついた気配を変化させる事は無かった。
 ――面白い子ね、これは。
「『時代や文明の欠片を閉じ込めて、訪れる人に公開する場所』とは、ここの『歴史博物館』で宜しいのでしょうか?」
「えぇ。参加者ね、分かった――時間も無いから、見せ合い無し3vs3で行きましょうか」
「承知しました」
 訥々と、必要事項だけを答える口調。アイリからプロジェクターを受け取りながら、手馴れた動作で其れを起動させる。
 少年が小さく背後を振り返ると、打ち合わせされていた様に、残り五人が背後へと下がった。初めから少年が戦う予定だったらしい。
 ――この中じゃ、一番面白そうね。楽しい戦闘ができると嬉しいけれど。
 アイリも決まっているパーティの準備を終えてから、ゆっくりと少年に笑いかけた。
「準備は出来た。始めましょうか?」
「えぇ――始めましょう」
 余りにも冷徹な、其れでいてはっきりとした返答――勝負しか見ていない、余りにも冷たい瞳。
 面白い勝負になりそうだ。そんな予感をはっきりと抱きながら、アイリはプロジェクターを作動させた。

戦闘開始!
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by sora_hane | 2009-01-22 20:49 | ポケモンバトル小説
*この記事は下記『砂塵竜巻の大乱闘』『鮮血の破滅者』の説明記事となります。該当記事を読了後、または同時進行にてお読み下さい。
 なお、個体値、努力値、種族値などポケモンの裏知識を知らない方は、先に『ポケモン小説を読む前に』を読了下さい。

下記読了後、こちらをどうぞ。
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by sora_hane | 2008-12-09 23:32 | ポケモンバトル小説
*この記事は下記『砂塵竜巻の大乱闘』の続き記事になります。先に下の記事をお読みになってからご覧下さい。

続きはこちらからになります。
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by sora_hane | 2008-12-08 22:14 | ポケモンバトル小説
 ――グゥゥゥ。
 優しく世界を照らす陽光の下、春色の華やかな風が流れる公園の中に、余りに切ない音が大音響で響き渡る。のどかな世界を壊してしまう音を鳴らす迷惑者に、けれど周囲の友人が文句をつける事はできなかった。
 ビニールシートに乗ったまま、リリィが泣き声で呟く。
「……ひもじいよー……」
「言うな……大体、人の弁当八割喰らって言う台詞じゃないだろうが」
 両目から、隠そうともせずに大粒の涙を零す妹に、フィルはただただ半眼で呟いた。
 オリエンテーリングともなれば、其れなりの距離を歩く。当然、昼飯時の食欲は、普段よりは旺盛になるという物。その為に、リリィの弁当箱は普段の数割増の量が入っていたのだが――どれだけ量を準備しようが、忘れてきては意味が無い。
「あ、あの、リリィちゃん、ちょっとだけ、なら――」
「くれ――ムグゥ!?」
 ルルがそっと渡そうとしてくれた弁当箱を見たリリィの眼が、宝物を掘り出したハンターの色を見せる。フィルは妹を片手で地面へと押しつけ、ルルの申し出を断わった。
「ルル、それはいい。一口差し出したが最後、弁当全部喰われるぞ。それで無くともルルの其れは量が少ないんだ。気にせずに食べてくれ」
「う、うん……分かった、そうする……」
 モガー、とバタ足で暴れるリリィに、引きつった恐怖の声を浮かべて、ルルがスタスタと下がっていく。リリィの暴れ具合も有って、普段よりも凄まじく怯えていた。ルルが距離を取ると、まな板の上で暴れ終わった鯉のように、リリィの動きが鎮静化した。シクシクと零れてくる泣き声に、空気が一段と重くなる。
 と。
 唐突に、キィ、と車が止まる音がした。音の残響を考えると、かなりの速度で走ってきたのだろう、と推測できる。
 音がした公園の入り口に目をやると、其れらしき黒塗りのベンツから、数人の男が飛び出してくるのが見えた。皆一様に執事服だ。ついでに、弁当らしい箱を持っている。
 ――この集団は……。
 エキスターの面々が眼を白黒させるのに、フィルは一人溜息をついて、その中の一人を見返した。
「レイター。少々やりすぎじゃないか?」
 振り返った先にいた少年――何処か質の良い服を着こなす、レイターを見やる。彼はほんの微かに苦笑してから、楽しげに笑った。
「僕だけが悪い訳じゃないと思うんだけどねぇ。ていうか、妹さんに食事を運んであげた人間に、何かしら言うべき事は無いのかい?」
 不敵に笑う少年に、エデンは肩を竦めて呟き返した。
「まぁ、感謝はしてるさ。わざわざ悪いな」
「あぁ、言っておくが君の分は――」
「安心しろ。どうせ弁当箱四ツじゃ、全部リリィの腹に収まる……ホント、俺の事が嫌いらしいな」
 フィルは深い深い溜息から、ただレイターを見やった。嫌味を話す姿すら何処か様になっている、黒髪の少年だ。この町の重役の一人息子という立場であり、しかもとんでもない資本家である為、彼は時折こうして浮世離れした行為をしでかしてくれる。見ている分には楽しいが。
 その立場である事を――金持ちの跡取息子である事を快く思っては居ないのか、普段は可能な限りフィル達と同じ行動をしているが、エキスターが解決できない事で困っている時に、良くこうして執事達を呼び寄せる。リリィやルル、メイにマーク――要するにフィル以外のエキスターには、何の見返りも無く助け舟を出してくる。特に女性陣には。
 けれど、彼がフィルの為に無償で助け舟を出した事は一度も無い――まぁ助けてもらいたい事など何も無いが。しかも、完全に敵視されているらしく、表立った妨害こそないけれども、チクリチクリと嫌味を差してくる事が多い。もう慣れたし、相手にするのもアホらしいが。
「レイター、ありがとねー! もうホント助かったよー!」
「い、いやいや、お安い御用だよ、リリィちゃん。その代わりじゃないけど、良ければ今度食事にでも――」
「え、食事? フィルと一緒ならいいよー」
 ズドン、とレイターの体の中心辺りに、大きく太い弾丸が刺さった気がした。余りにも切ない表情で、ガクリと肩を落とす。最も、弾丸を発射した張本人は、弁当を喰らうのに夢中だが。
 彼は傍から見ても分かり過ぎる程、リリィに御執心。フィルが嫌われる要因もつまりは、確実に其れなのだろう。なんせ、リリィはずっとフィルと共に居るし――絶対に傍から離れようとしない、というのだから。
 ただまぁ、流石にこの状況であっさりと断わるのは、余りにも哀れすぎるが。
「折角弁当を届けて貰ったんだ。ちょっと位付き合ってやっても良いんじゃないか?」
「え、だからフィルと一緒なら良いって言ったよ? フィルだけじゃなくてさ、エキスターの皆とも」
 レイターの周囲により一層の暗闇が巻きついた。無理もないけれど、哀れすぎてどうしようもない。ルル達も、とても哀れみに満ちた目で彼を見るだけだ。
 ――リリィは他人の好意に疎いしな……。
「レイターはお前と二人で行きたいらしいが」
「えー? フィルと離れ過ぎるの嫌だよ……離れたら、あの時――」
 リリィの箸が止まる。空気がぞっと冷え込んだ。泣き声にも似た少女の声に、その場に居る全員が怪訝な顔になる。レイターすら。
 フィルもまた、言葉を失くした。
 ――…………。
「あぁ、分かってる。けどな、今度は流石に大丈夫だろ。周りにどれだけの護衛がつくと思ってる? あの時とは違う」
「分かってるよ、もうあの人達も居ないって! けれど、もう嫌なんだよ……!」
 リリィが涙を目尻に浮かべて叫ぶ。フィルは小さく溜息をついた。彼女と一生共に、なんて出来る訳がない。だからこそ、可能な限り早く独立して貰いたい物だが、まだまだ、暫くの間は不可能か。
「……リリィちゃん、何か有ったの?」
「まぁ、昔ちょっとな。レイター、悪いが」
 振り返ると、彼は少し疲れたように肩を竦めた。
「分かっているよ。僕も泣き顔のリリィちゃんと一緒に食べる気にはならないさ」
「悪いな――リリィ、箸を止めて悪かった。続けてくれ」
「あ、うん。ごめんね、レイター」
「あぁ、いいよいいよリリィちゃん。気にせずゆっくり食べてくれていいから」
 先ほどまでの落ち込み具合からは想像も出来ないほど、にこやかで朗らかな笑顔を作って、レイターが笑う――笑った時、既にリリィの興味は弁当へ戻っているのだが。
 地面に顔がのめり込みそうな具合に両腕を地面について跪くレイターに軽く黙祷してやりながら、フィルは残った三人に話し掛けた。
「とりあえず、この二人が暫くこれだし――暇潰しに、対戦でもやらないか?」
「――なぁ、フィル。なら、その相手をしてもいいか? フルバトルでやろうじゃないか」
 と。落ち込んでいた筈のレイターから昇った声に、フィルは首を傾げて振り返った。
 彼はゆっくりと立ち上がりながら、何処か座った眼差しを見せてくる。暗いオーラがその周囲を覆っていた。
「あぁ、構わないが。なんだ、八つ当たりか何かか?」
「――いや。君が頼られてるのが分かったから」
「目の前で完膚なきまでに倒して、権威を下げよう、か。まぁ構わないけどな」
 レイターが言葉に詰まったが、少なくとも否定はしなかった。執事に命じて、離れた場所に簡易対戦アイテム――プロジェクターを準備させる。
 ――……リリィが俺を頼るのは、別に強さだけでもないんだがな。
 内心で呟きながらフィルもまた腰を上げた。つい先ほども負けたばかりだというのに。
「ん、フィル、戦闘?」
「あぁ」
「そっか――頑張ってね!」
 歩いていくレイターに無邪気なナイフが突き刺さったのが見えた。ただ合掌――エキスターの面々も。
「ほへ? 皆どうかしたの?」
「リリィちゃん、もうちょっと、優しく、したげる、方が良い……」
「えぇ? ボク、何か酷い事言った? フィルを応援しただけなのに……」
「……うん、フィル君には凄く優しいね……」
「ルル、良い……これ以上は哀れなだけだ」
 フィルは力なく頭を振ってから、世界を丸ごと覆い尽くすように真っ黒いオーラを放つ対戦相手の下へと、多少やる気なく歩き出した。
 ――ま、余り負けたくはないしな……切り札を使わせて貰うか。
 テクリテクリと歩きながら、フィルはDSに手を伸ばした。今まで使わなかった切り札を含む、パーティを組み上げる為に。

開幕はこちらからになります。
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by sora_hane | 2008-12-08 22:13 | ポケモンバトル小説
*この記事は『戦雪と舞う少女』の説明記事となります。該当記事の読了後、または同時に閲覧下さい。
 なお、個体値、努力値、種族値などポケモンの裏知識を知らない方は、先に『ポケモン小説を読む前に』を読了下さい。

説明はこちらから。
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by sora_hane | 2008-11-22 20:03 | ポケモンバトル小説
「しかし、フィルがあんな簡単に負けるなんてなぁ。リリィちゃんもそうだけど、かなり吃驚だぞ、あれ」
 フレアとの戦場から離れた後、信じられない、というような声でマークが呟く。追随して周りの子供達も頷く。
 最後尾を歩くフィルは苦笑するしか出来なかった
「だから、期待しすぎだって。俺はそこまで強くない、って今まで一体何回言った?」
「けどさー、リィドさんの弟子だろ? 対戦相手がリィドさんの知り合いだったみたいだから、強いのはしょうがないけどさ」
「あたしだったら多分瞬殺だったから、フィルで良かったのかもしれないけど」
 ――リィドさん、ホントどれだけ神格化されてるんだか。
 少なくとも、先ほどの勝負は完全にフィルの瞬殺だったと思うのだが。
 これ以上話を続けても、同じような会話しか聞けそうになかったので、フィルはさっさと話題を切り換えた。
「所で、聞いていいか――メイ。先頭を突き進むのは良いが、次のチェックポイントが何処か分かっているんだろうな?」
「当り前だよ! ね、ルル!」
「え、えっと……う、うん、多分大丈夫だよ、フィル君……」
 酷く自信満々に答えたメイに、後ろを歩く少女――ルルが幽霊のような声で続ける。
 リリィ、メイと違って大人しい少女だ。肩よりも伸ばした髪にはちゃんと手入れが入っていて、服も真白。どちらかといえば地味で目立たない。誰とも仲良くなれるが、引っ込み思案なのか、相手に流されるがままに話し相手となっている。けれど、彼女自身は其れでも楽しくは有るようで、中々笑顔も多かった。
 けれど、フィルが話しかけた時は余り笑顔で答えてはくれず、言葉少なにボソボソと、聞こえ難い声で答えてくる事が殆どだった。熱病に浮かされたような顔色の時もある。
 ――良く分からないが、多分嫌われてるんだろうな。
「で、何処に向かっている? 念の為に言って置くが、俺が答えだと思った場所はたった今通り過ぎたからな?」
 ピタ、とメイの足が止まる。振り返ってきた少女の瞳に浮かぶのは、困惑と多大な冷や汗だった。
「……え?」
「まずは聞かせろ、お前達は――いや、違うな。メイは何処だと思っていたんだ?」
 どう考えても、メイの行動にルルの意見は反映されていなかっただろう。ルルが言われるままに従わされているのがいつもの事だ。
 メイは困惑した表情のまま、少し小さな声で答えてきた。
「売らないんだから、民家の集合場所――住宅街!」
「店、はどこに行った」
 白い目で見る。彼女は誤魔化すように笑ったが、誤魔化しきれない冷や汗がたっぷりと浮かんでいた。
「全く……こういう駄洒落は、普通お前達の方が得意だろ」
『駄洒落?』
 聞き返してきた少年少女に、溜息と共に頷く。
「あぁ。売らない店――何も売らないで成り立つ店が有る訳無いだろ。買い取り専門の店ならともかく、そう言った店が同時に軒を連ねる光景は想像しづらい。そうなると、文面そのまま受け取るんじゃなく、別の視点で考える必要がある。第一、俺達のような子供に向けた問題に、難しい問題を出す訳が無いしな。となると、売らない、に対する視点を切り替えてやれば良い。売らない、の同音異義語、聴き覚えがあるだろ?」
『同音異義?』
 ――この言葉も理解できてないのか。
 フィルは軽く肩を落とした。多少言葉は難しくても、理解はできると思うのだが――
「え、えっと……もしかして、占い……?」
 と。おずおずと呟いた少女の方に、全員の視線が向く。ビクリ、と体を震わせたルルに、フィルは軽く笑いかけた。
「正解。占いが正しい答えだ。占い師は似た場所に軒を連ねる事が少なくなく、この町にも占い通りがある――ま、今入り口は通り過ぎたがな」
「おー! ルル、凄い!」
「頭良いねー!」
 少女二人から、惜しみの無い賛美。少年二人も発言こそ無かったが、同様の気分である事は表情から見て取れた。
 それだけ誉められたルルの表情には微かな笑顔が有ったが、同時にどこか、苦くも見えた。
 ――この引っ込み思案な性格だ。もしかすれば今までも発言していないだけで、何度も正答を出していたのかもな。
 予想にしか過ぎないが、恐らくはそういう事だろう。これからは、周りが詰まった時に話題を振るのもありかも知れない。
「さて、正解が分かった所で行くぞ――まぁ恐らく十中八九、あそこで暇そうに佇んでる女性だけど」
 フィルは占い道――占い師ばかりが軒を連ねる道の入り口のベンチに座り込む人間を見つめて、淡々と呟いた。他に其れらしき人間も居ない。
「で、今回は誰がやる? またジャンケンで決めるのか?」
 フィルが問いかけ――いや、其れよりも早く。
『さーいしょーはグー!』
 とっくに始まってたらしい。フィル抜きなのは、さっき戦闘した為だろうが。
 ――同一プレイヤーの連続戦闘禁止ルール、か。
 今回、ポケモンテーリングが始まるに当たって、学校側から配布されたルールだった。このルールが無ければ、強いプレイヤーばかりや、チーム内で力が強い子供ばかりがプレイする事になるだろうから、当たり前の話だが。
 そうは言っても、反則する奴は少なからず出るだろう。その為、不正防止の措置として、対戦後はプレイヤーネームを大人が本部へと伝える仕組みになっているらしい。
 ――ガキの遠足に、難儀な事だけどな。
 フィルはそんな事を思いながら、とりあえず到着を知らせる為に、佇んでる女性の元へと歩いていった。
 視線を投げてきた彼女に、小さく一礼して問いかける。
「『売らない店が集う道』とは、この場所で正しいですか?」
「――正解。十数分ぶりの相手だねぇ。あんまり来ないもんだから、正直スゲー暇してたよ。あんたがやるのかい?」
 気取らない、というかとても気安い口調で言った彼女に、フィルは淡々と頭を振った。
「あそこでジャンケンしてる連中の内、誰かが貴方と戦う事になります」
「そっか。どうでもいいけど早く決めておくれよ、こっちは退屈をずっと耐えてきたんだからさぁ。ん、あの子かな?」
 女性の言葉に、フィルも後ろを振り返った。子供達の輪を離れ、一人きょどきょどと落ち着かない――というか、後の敗北者達から送られてくる念に怯えているとしか見えない様子で、ルルがこちらへと歩み寄っていた。
「ルルが勝負するんだな?」
 呼びかけに、また少女が小さく震える。対人恐怖症か、と思わず呟きたくなった。
「う、うん。け、けど、私弱いから、フィル君に、変わった方が、良いと、思う……」
「何言ってるんだ。俺はさっき戦ったばかりだから、出られないだろ」
「う、ぅん。そ、そだったね――」
 モジモジと、あくまでも小声で話す少女に、フィルは気力が抜き取られていく気分を味わっていた。フィルを見ようともせず、俯きっぱなしで答えられても。
 ――俺、本当に何かしたか……?
 少し考えてみるが、何も思い当たる現象は無い。そもそも、まともに話した事自体限りなく少なく、つねにメイの後に居るルルに対して何ができた訳でもない。
 とりあえず、考えても分かりそうに無い事はスルーして、フィルは女性が腰掛けていたベンチの空席に腰掛けた。それから、ルルを見つめて、せめてもの言葉を送っておく。
「ルル。絶対勝て、なんて言わない。弱いからって戦っちゃいけない、なんてルールも無い。対戦を楽しめばいい」
 それに、ルルは俯いていた顔を上げた。頬が赤かったが、声をかけられた事への驚きは有れど、少なくともフィルを嫌う色は見えなかった。
「う、ぅん!」
 ――やはり、対人恐怖症か?
 大きくコクリと頷いて、嬉しそうに笑うルルを見、そんな事を思う。とてもそういう風には見えないが――
 まぁ、そんな事はどうでもいい事。フィルは軽く腕を組み、戦場と変化しつつある前方へと意識を移した。

え、えと、お、お願いします……。
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by sora_hane | 2008-11-21 03:52 | ポケモンバトル小説

『焔龍の咆哮』説明

*この記事は『焔龍の咆哮』の説明記事となります。該当記事の読了後、または同時に閲覧下さい。
 なお、個体値、努力値、種族値などポケモンの裏知識を知らない方は、先に『ポケモン小説を読む前に』を読了下さい。

読了されたら、こちらから。
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by sora_hane | 2008-11-13 21:22 | ポケモンバトル小説
 フィル、フレア。両者のポケモンが、人通りの無い街路へと展開される。
 フィルのポケモンは、だらしなく地面に寝そべった、気力という物を欠片も感じ取る事が出来ないポケモン――ケッキング。自堕落な姿ならではの特性『なまけ』を持つ、ノーマルタイプのポケモンだ。一度行動した次のターンは『行動が出来ない』という最悪すぎる特性。
 が、ケッキングはその特性を補いうる種族値を有するポケモンだ。禁止級の伝説ポケモンと同レベルのそのパラメータは、生半可な相手なら一撃で吹き飛ばす攻撃力を持つ。姿形で判断すると地獄を見る事必至のポケモンだ。
 対するフレアのポケモンは、先ほどの少年が使用した地上竜――ガブリアス。最強の一角とされるポケモンだが、そのパラメータは、残念ながら目の前で威厳無く寝そべるポケモンには到達しない。
 ――やる気の無い化け物と、最悪の竜、か。さて、どっちが勝つのやら。
 リィドはやる気無く欠伸を放りながら、その戦を見つめ――る事も無く。
「リィドさん、このヌオーの技どうすればいいかな?」
「この勝負の事なんですけど、こういう時って宿木を打つか身代わりを連続で張るか、どうした方がいいと思います?」
 とりあえず、さっきから隣で煩い子供達の方を相手する事にした。

戦闘スタートはこちらから、となります。
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by sora_hane | 2008-11-10 09:53 | ポケモンバトル小説

『灼熱の戦人』―説明―

*この記事は『灼熱の戦人』の説明記事となります。真下の該当記事の読了後、または同時に閲覧下さい。
 なお、個体値、努力値、種族値などポケモンの裏知識を知らない方は、先に『ポケモン小説を読む前に』を読了下さい。

説明はこちらから。
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by sora_hane | 2008-11-01 22:51 | ポケモンバトル小説
「簡単だったねー、今回のヒント!」
「ま、俺が居れば楽勝だろ!」
 ――あれだけヒント貰えばな。幼稚園児でももうちょっと早く答え出せるだろ。
 後ろを歩くメイとマークの会話に、フィルは内心で毒づいた。彼らが自力で答えを見つけ出す間に、リリィにチロルチョコと、小腹も空いていたからソフトクリームを購入してきたのだが、リリィが二つ食べ終えてなお、答えを出せていなかったのだから。
 彼らがあのヒントを解くまでに掛かった時間は、リリィが戦闘をしていた時間の十倍近かったと思う。お陰で他のグループの子供も、一斉に町へ放たれる始末だ。初めに学校の外へ出たというアドバンテージは木っ端微塵に霧散した。
 にも関わらず、メイとマークは自分達で解けた、と判断している為か素晴らしく上機嫌だ。勿論、彼ら二人だけじゃなく、残り二人も上機嫌だが。
「フィル、どうしたの? 凄く頭痛そうにしてるけど……」
「聞かないでくれ、疲れただけだ。それより、後の奴らに伝えてくれ。『中と小の狭間を売る店』が見えてきたって」
「はーい」
 テクテクとリリィが後ろに下がった。そしてすぐにフィルを追い抜くように、メイ達が店へと駆け出していく。正確に言えば、店の前で待つ判定人へと。自分の口で答えを言えるのが嬉しいのか、単純にポケモンテーリングを楽しんでいるのかは知らないが。
「そういえばさ、ボク、聞いてなかったんだけど……中と小の狭間、って何?」
 メイ達についていかなかったリリィの問いに、フィルは人差し指、親指を隠した右手の甲を彼女に示した。
「……どうかしたの?」
「中指と小指の間は?」
「薬指だよね。でもそれ――って、あぁ! そういう事だったんだ!」
 ――どうして理解が一瞬遅れる。
 まぁ、薬指だよね、で止まらなかった所だけでも良しとすべきか。なぞなぞの類は小学生だからこそ解けそうな問題で、其れが故に、十回のヒントこそあったものの、彼らでも解く事が出来たのかもしれない。
 そんな事を思いながら、この町に一軒しかない、薬屋に目を向ける――と。
「あれ、バトルしてる?」
「みたいだな」
 リリィの疑問に、フィルも淡々と頷いた。路上に光が膨れ上がって、2体のポケモンが形成される。メイ達のポケモンかとも思ったが、そうでもないようだ。彼女らは見物者の輪の中で歓声を上げていた。
「他の子と、目的地の人のバトルかな?」
「そういう事だろ。ドータクンなんか、メイやマークは余り使わないからな」
 ドータクン。セインが使用した、耐久の鋼ポケモン。それも対戦相手との相性を見る限り、良いとも悪いとも言えないか。
 全身を鋼で覆われた、紅の戦士――ハッサム。虫・鋼という恵まれたタイプを有するポケモンで、攻撃のパラメータが尋常じゃなく高い。素早さが低めで特功が話にならないほど低い事を除けば、高水準のパラメータだ。
 自慢の攻撃力も、持ちうる技の威力が平均的に低い為、其処までの威力をはじき出す事は無い。が、決して低くも無い。
 ハッサムのメイン技『シザークロス』は、タイプが虫である事に起因して、ドータクンへは等倍で入る。ドータクンはタイプ相性で相手の攻撃を受け流すポケモンである為に、多少厳しい状況で有ると言えた。
 と。
「お、フィルにリリィ。何だ、お前ら来てたのか」
 そんな声が後から聞こえてきた。凄く聞きなれた、というかほぼ毎日近く聞いている男性の声だ。
 フィルは振り返る事も無く、後から近づいてくる彼へと答えを返した。
「まぁ、オリエンテーリングですからね。必然、リィドさんともどこかで出会う事にはなるでしょう」
「分かりきってる事わざわざ言うなっつーの」
 其れに、後から来た男性――リィドがつまらなさそうに呟いた。彼はフィル達の隣で立ち止まると、戦場をやる気の無い目で眺めながら、淡々と呟いた。
「んで、ここにいるって事はフレアと戦りに来た?」
「フレア?」
 リリィの問いに、彼は戦場の方へと右手を伸ばした。
「ちょうど今戦闘してるハッサム使いだ。ついでに言うと、俺の友達」
「成程。手に持った二本のジュースは、その為でしたか」
「そういう事。ま、俺は焼酎持参してるんで、両方ともアイツの分だけどな」
「……飲み過ぎないで下さいよ、本気で」
 フィルが向けた半眼を、リィドは軽く笑い飛ばした。
「其処まで弱くはねーよ、安心しとけ。其れより行くぞ、お前らも対戦は見ときたいだろ?」
「……そうですね。友人も共に、良いですか?」
 野次馬の中にいるメイ達を指差す。自分達二人だけが別行動、という訳にも行かないだろう。
「あぁ、構いやしねぇよ。呼んできてやれ」
「有難うございます。リリィ」
「うん、呼んで来る! 先に行ってて!」
 タッ、とリリィが駆けていく。リィド――彼らに言わせれば、狂笑の戦神か。そんな人間と共に見られるというのだ、文句が出る訳も無いだろう。
「うし、行くか」
「えぇ。と、お聞きしておきますが。フレアさんの実力と言うのは如何ほどなのですか?」
 動かない戦場を眺め、呟く。出現から十数秒は経過しただろうに、お互いに動きが無い。人によっては選択を長考する人もいるから、どちらかが其れなのかもしれない。
 リィドは、ん、と悩むように呟いて、
「アイツの実力を説明するのは難しいな、正直。結構なムラが有るんでな……活きてる時は誰も手ェつけられない程に暴れ回るし、逝ってる時は天中殺か、って言いたくなる位運回りが悪くなる。単純に言えば、激しい戦闘をする奴、かな」
「活きてる時は、リィドさんでも止まらない程?」
「あのな、俺は神じゃねーんだぞ。普通に負ける時は負けるっつーの、わざわざ俺でも、なんて言うんじゃねぇよ」
 うんざりと呟いてくるが、それは多少過小評価だと思えた。あれから何回もこの町の廃人達と触れ合う、戦り合う機会が有ったが、そのほぼ全てで彼の存在は、かなり高い位置にあった。二つ名も、彼の異様な勝率を称えて付けられた物だと教えられた。実際に、フィル達との戦闘は愚か、未だ彼が戦闘で負けた姿を見た事が無い。
 ――そんなリィドさんに勝てる人、か。
「お、動き出したぜ」
 どうやら、今日が逝ってる日である事を祈るしかなさそうだ。そんな事を思いながら、フィルは次に闘うであろう人間の姿を、その動きを、はっきりと眼へと捉えた。

対戦開始だよ!
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by sora_hane | 2008-11-01 02:40 | ポケモンバトル小説