現状、PSO2一色になりそうです。


by sora_hane
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カテゴリ:ポケモンバトル小説・外伝( 1 )

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 闇空に舞う白の雪。冬に舞い散る氷の桜が、三日月を受けて優しい輝きを見せていた。雪雲の狭間に覗く空に瞬く星々の光を眺めながら、少年は片手のグラスを煽った。熱にも似た味わいを喉の奥へと嚥下しながら、町を染めた壮麗な雪景色を睥睨する。
 聖夜――異国の宗教者が生まれた、恋人達が思いの丈を伝え合い、無邪気なる子供らが幸福の内に眠りへとつく日。今朝、出掛けに父からプレゼントされたワインをトクトクと飲みやりながら、フィルはベランダの柵に体重を乗せた。
 とてつもなく穏やかで、雑音の無い幸福な時。フィルが求めて止まなかった時間。
 最も――十分も味わえれば、十分という所だろうが。
 そんな事を考えていた矢先に、背後でバン、と扉が開け放たれる音がした。首だけで振り返ると、雪色のワンピースを着込んだ少女が、不服そうな怒り顔を見せていた。
「ほら、フィルー! 休んでないで手伝ってよ、飾り付け! その帽子も折角だからかぶってよー!」
 ――こうなるのは、目に見えていたからな。
「はいはい、分かってる……」
 キンキンと響くリリィの声に、フィルは嘆息と共に答えながら、ベランダから室内へと踵を返した。縁に乗せておいた、小さなサンタ帽子を申し訳程度に頭に載せる。
 春を思わせるほどに温まったリビングの中、手近なテーブルにワイングラスを置いてから、窓際で小さなツリーと対峙する少女の隣に立つ。幾つものポケぐるみが飾り付けられたモミの木へ、積雪を象った白のモールを飾り付けていく。
 この小さなツリーの飾りつけは、リリィが言い出した事だった。この聖夜にツリーなしなんて哀しい、と。自分達二人しか見ない、しかも一夜飾り付ければ役目を終える簡易のツリーを、手間暇かけて飾り付ける理由は聞きたかった。が、下手な事を聞けば、また大声で泣き出されるので、基本的には何も言えなかった。
 其れに、とても楽しそうに。心の底から嬉しそうに笑っているリリィを見ているのは、それだけで心地が良い。
 何よりも、この夜――クリスマスという、リリィにとっては辛い筈の夜に、リリィが笑ってくれるだけで、フィルとしては嬉しかった。
 ――……もう、あれから一年か。
 フィルは作業の手を止めて、ほんの僅かな過去に想いを投げた。
 一年前の粉雪が日――血色の聖夜へと。

――聖夜――
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by sora_hane | 2008-12-25 00:00 | ポケモンバトル小説・外伝